米ラスベガスにある球体のエンターテインメント施設「スフィア」に行き、定期上演中の「オズの魔法使い」を鑑賞してきました。これがまた、すごかったです。かつて体験したことがない映像の世界がそこにありました。どこがどのように優れているのか。振り返ります。(2026年5月時点の情報です)
120万個のLEDパーツ
スフィアはラスベガスの中心的なストリート「ストリップ」から東に800mほどの距離にあります。ラスベガスの象徴であるベラージオの噴水前からだと、大通りを歩いて1.7kmほどです。ベラージオ以南のホテルに宿泊する人は、少し距離があるので、Uberなどのアプリでタクシーを呼ぶと楽でしょう。
こちらが外観です。球体の表面には、さまざまな映像や広告が浮かんで流れていきます。次々と切り替わっていくので、これだけを見ていても、なかなか楽しめます。よくぞこのようなものをつくろうと思いついて、実際に形にしてみせたものだと感心します。

下の写真は、スフィアの近くにある世界第2位の巨大観覧車「ハイローラー」に乗って撮ったものです。離れたところからスフィアを眺めると、球体の表面はつるっとしているように見えます。

しかし、近くに寄ってみると、スフィアの表面はこのように網目のようになっています。1つ1つの点はLEDライトのパーツで、54,000平方メートルの球体表面に、約20cmの間隔で120万個取り付けられているそうです。

スフィアは24時間休まず点灯しており、深夜でも映像が流れています。さすがは不夜城のラスベガスです。気になるスフィアの年間消費電力量は、95,779MWhなのだとか。これは、日本の一般家庭に当てはめると、21,000~24,000世帯が年間に使う電力と同じくらいになるらしいです。環境とか省エネとかが声高に叫ばれる時代にあって、なかなか豪快な施設です。その電力の大半は、ネバダ州の砂漠地帯にあるメガソーラーから供給してもらっているとのことです。
持ち込める荷物はとても小さく
PLAZA ENTRYと書いてる場所が入場口です。建物の南東側に当たります。タクシーに乗ると、こちら側で降ろしてもらえます。ちなみに、われわれはオズの魔法使いの入場チケットを、スフィアの公式HPから事前に購入して訪れました。

スフィアに持ち込める手荷物は、とても小さくて、15cm×15cm×5cm(6インチ×6インチ×2インチ)以内に定められているとのことです。ポケットに入る財布やスマホ以外は、ほぼ何も持ち込めないと思っておいた方がよいでしょう。セキュリティーが厳しいアメリカあるあるです。
入場してすぐ目の前にあるショップです。Tシャツや小物類を扱っています。

エスカレーターで上のフロアに上がると、このように吹き抜けの空間になっています。

こちらのフロアにもショップはあります。

上映される空間の秘密
では、オズの魔法使いが上映される空間に入ります。座った席からの眺めです。こちらの席は、売り出されている中で最も高価なものです。中央やや前寄りで、バランスよく映像を楽しめるとされています。

内部は一見すると、どこにでもありそうなコンサートホールのようです。前方にステージがあり、緞帳のようなものが取り付けられていて、壁面からスピーカーがぶら下がっています。割と普通の空間だなと、この時は思っていました。
それが誤解だと気づくのは、開演してからでした。
スフィアには18,600席あるのですが、そのうちオズの魔法使いの上映で使っているのは、約1万席なのだそうです。

客席の傾斜はなかなか急なものがあります。

映像が現れる瞬間から
さて、では上演の話に移ります。
ひと言でいえば、「驚くべき未知の体験だった」ということになるでしょうか。
まず、映像が立ち現れてくる瞬間からして、驚かされます。
以下、ネタバレを含みます。
ステージはどこに消えた?
オズの魔法使いの話に入る前に、空間に映し出される映像そのものについて触れます。
照明が落ちて暗くなると、映像が急に視界いっぱいに現れます。前方だけではありません。左右ほぼ180°、そして天井まで、空間のほぼ全体が映像に覆われます。思わず感嘆の声がもれます。
そして、事前知識があまりない観客(われわれがそうでした)は、あっけにとられるわけです。
おかしいな、前の方にステージがあったよね、緞帳やスピーカーもあったよね、あれって、どこに消えたの? 壁面はステージに向かってすぼまるような構造だったよね、なのになぜ急に視界いっぱいに映像が広がるの?と。
もう一度、上映前の写真を載せます。どう見ても、特段変わったところがないように見える劇場空間です。ステージで何かのショーが行われる場所だと思えば、何らおかしな光景ではありません。
ただ、そうではないのです。空間全体がオズの映像に切り替わるのです。いったいなぜなのだ?

答えは、シンプルです。
目の前に見えているステージも緞帳もスピーカーも壁面も、すべてが偽物なのです。
そう、これらは球状の壁面に埋め込まれたLEDによって描き出された映像なのです。
見分けが付かない
上と同じ写真をもとに、「ステージ」に沿うように青色の線を描いてみました。この線より手前が実在する空間で、線より上が球体状の壁面に映された映像になります。

どうでしょう、この写真で見分けがつきますか? われわれは実際に訪れたにもかかわらず、分からなかったです。入場した後、この空間がどうやってオズの世界に変わるのだろうと漠然と思ったのは確かですが、目の前にあるステージやスピーカーが映像だなんて、一瞬たりとも考えませんでした。
とにかく、とてつもなくクオリティーの高い映像です。帰国後、調べてみて、その「トリック」に膝を打った次第です。
75分の短縮バージョン
本題のオズの魔法使いに入ります。
上映されるオズの魔法使いは、1939年に公開された映画「The Wizard of Oz」です(正確な邦題は「オズの魔法使」なのですが、ここでは一般的に用いられる「魔法使い」の表記とします)。不朽の名作として今もって高い知名度を誇り、劇中歌の「虹の彼方に」(原題 Over the Rainbow)も現在に至るまで歌い継がれる名曲として広く知られています。
元の映画の上映時間は101分ですが、スフィアでは一部をカットして75分の上演となっています。
テーマパークにありそうだけど…
さて、どんな映像体験なのかについてです(本編は当然ながら撮影できないので、写真はありません)。
分かりやすく言うと、目の前の映像に合わせて、椅子が動くアトラクションです。ディズニーランドや、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどにあるものに、イメージ的には近いです。
ただ、そうは言っても、完全に似て非なるものです。スフィアの映像は16Kという超高精細で、そのクオリティーたるやテーマパークのアトラクションとは比べ物にならないほど高いものがあります。また、映像が映し出される面積も、当然ながらスフィアの方が圧倒的に大きいです。
疑似的な触覚を生み出す技術
一方で、スフィアの椅子は、安全レバーが付いたテーマパークのアトラクションのように激しく動くことはありません。座面が傾くなどするわけではなく、基本的には振動です。
スフィアでは「ハプティクス」と呼ばれる技術によって、シーンに合わせて超低周波を座面の下から発しているらしいです。振動といっても、その使い方によって多彩な表現方法があるようで、疑似的にさまざまな触覚を生み出しているとのことです。
なるほど、確かにそうなのでしょう。座席が傾くわけではないのに、ジェットコースターに乗った時のようなふわっとした感覚なども味わうことができました。
圧倒的な竜巻のシーン
最大の見せ場は、映画序盤に訪れる竜巻のシーンでしょう。
ここは、本当にすごいです。
主人公のドロシーが竜巻に巻き込まれると、実際に客席に強風が吹きます。椅子が激しく震えて、木の葉に見立てた紙吹雪が宙を舞います。立体感がある映像と相まって、自分が今まさに災害に直面しているかのような錯覚を覚えます。
このシーンに関しては、相当に作り込まれています。見事なまでの完成度です。
下の写真は、終演後に撮った客席部分です。ちょっとブレていますが、地面に何かしら落ちているのが分かるでしょうか。これが上映中に舞った紙です。

AIを駆使して描き足された映像
映画の進行に関しては、1939年に公開されたものと同じです。部分的にカットして短くなっていることは先ほど述べましたが、ストーリーそのものに変更はありません。ドロシーがオズの国を訪れ、カカシやブリキの木こり、ライオンと出会い、最終的に家に帰っていくという流れです。
ただ、当時の映像そのままが流れるのかと言うと、そうではありません。スフィア版では、本来映画に映っていない背景などを、生成AIなどによって描き足しているそうです。
これがまた、古い映画とのつなぎ目が分かりやすく残っているわけではなく、個人的に気になる場面はありませんでした。
カメラワークの修正も
カメラワークも部分的に手が加えられています。ドロシーら元のキャラクターだけを、AIを活用するなどして抽出し、それらを新たに描き直した背景で動かすなどしているそうです。確かに、ドロシーら一行を俯瞰的な視点からとらえた場面など、オリジナル映画とは違ったシーンがあったように感じました。
リンゴが落ちてきた
竜巻のシーンと並ぶ名物が、ドロシーがリンゴの木と出会う場面です。ドロシーがリンゴを手に入れる瞬間、空間内にスポンジ製のリンゴがわんさか降ってきます。
われわれは残念ながら、入手できませんでした。特定の場所に多く落ちてくるという感じではなかったので、これは運というほかないでしょう。
終演後、出口に向かう観客を見てみると、それなりに多くの人が手に持っていました。あくまで感覚的なものですが、30~50人に1人くらいはゲットしていたような感じです。
このリンゴは以前、スフィア内のショップで販売していたようですが、われわれが訪れた時には扱っていませんでした。売っていたとしても買う気はなかったのでいいのですが、どうせなら手に取ってどのようなものなのか確かめてみたかったなとは思いました。
「空飛ぶサル」のドローン登場
竜巻とリンゴのシーンが終わった後、しばらくすると、映画に登場する「空飛ぶサル」のドローンが数体、スフィア内の空間を実際に飛びます。これもびっくりしました。ハイクオリティーの映像にフィジカルなものを混ぜ合わせて、より濃密な世界を作り出しています。
サプライズを伴うような見せ場は、そのくらいだったでしょうか。
終始どのシーンも美しくて、臨場感があって、文句なしに素晴らしいです。単に映画館に行くのとはわけが違います。本当にオズの世界に入り込んだような気分になる場面がいくつもありました。
それはそうなのですが、欲を言えば、もう1、2個くらい、竜巻やリンゴ級の分かりやすい「名物」ともいうべき場面があれば、さらによかったかなとは感じました。あくまで欲を言えばの話です。
ともあれ、満足度はかなり高かったです。鑑賞に訪れてよかったと素直に感じました。
エメラルドシティの色に
終演後、吹き抜けとなっている空間のエスカレーターを降りて出口に向かいます。すると、このようにオズのホログラムが現れていました。空間全体が、オズが暮らす宮殿「エメラルドシティ」の色にライトアップされています。開演前から様変わりしていました。

外に出てスフィアの周囲を歩いてみます。すると、ドロシーが履くことになる巨大なルビーの靴がありました。空気を入れて膨らませるバルーンです。劇中、竜巻に飛ばされたドロシーの家の下敷きになって死んでしまう「東の悪い魔女」のシーンを模しています。記念の撮影スポットとしてとてもいいです。アメリカっていう国のエンターテインメントは、総じてこういうちょっとした喜ばせ方が上手だなと思います。

少し離れたところから見ると、このような感じです。

映画を見てから行こう
スフィアのオズの魔法使い、いかがだったでしょうか。もし興味を持って実際に行ってみようと思われる方にアドバイスをするなら、映画を1度は見て行った方がいい、ということになるでしょうか。
スフィアの上演に関して、言うまでもないことなのでわざわざ書くのもどうかと思いますが、日本語字幕はありません。英語を不自由なく聞き取れる人はその限りではないでしょうが、そうでない人は、映画の内容とシーンを頭に入れて行った方がいいでしょう。そうすれば、スフィアというエンターテインメント施設の圧倒的な「能力」を味わうことに集中できます。
映画の内容を知っているがゆえに、当日の楽しみが半減するなんてことはありません。ストーリーの進行についていけずに、変なストレスを抱えてしまう方が、よっぽど損です。ここはオズの魔法使いという不朽の名作を知るために行く場ではなく、オズという題材を通じてスフィアのすごさを体感しに行くところです。
オズの魔法使いはAmazonのプライムビデオなどで見ることができます。
どの席がいい?
先ほど触れた通り、われわれは最も高価な席で鑑賞しました。確かにとても見やすかったです。でも、チケットはかなり高かったです。そこまで払う必要があったかなという思いは少しあります。
チケットは後方が安いです。最前列辺りも映像バランスの観点から、少し価格が抑えられています。下の写真を見てもらったら分かるかもしれませんが、空間内には高低差がかなりあります。上のほうと下のほうでは、見え方はかなり違うことでしょう。

球状の空間に映し出される映像という特殊性を考えても、席は左右の端よりは、真ん中あたりの方がいいのは間違いないかと思います。
ただ、個人的な印象で言えば、後ろの方の席であっても、少し左右に寄っていても、スフィアのすごさやテーマパークと違った新しさといったものは、十分に味わえるのではないかと感じました。中央付近のチケット価格に尻込みするようでしたら、無理に高い席を選ぶ必要はないような気もします。

オズの上映はいつまで?
スフィアでは2023年9月の開業以来、「ポストカード・フロム・アース(Postcard from Earth)」というオリジナル作品が上映されていました。オズの魔法使いの上映に切り替わったのは、約2年後の2025年8月のことです。
施設としては、やはりリピーターを呼び込む必要性があります。そう考えると、同じ作品をこの先もずっと上映し続けるはずがなく、どこかのタイミングで再び新作に切り替わるはずです。前例にならうなら、オズの上映は2027年の夏ごろに一つの区切りを迎えるかもしれません。
新作はどのようなものになるのでしょうか。何になるにせよ、スフィアという施設の能力を最大限に引き出せるような作品になったらいいと思います。

お台場に誘致?
スフィアは現在、ラスベガスにしかありませんが、世界各地で誘致合戦が行われています。アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビへの進出は既に決まっていて、2029年の開業を目標に動き出しています。
日本では2026年3月にSBIホールディングスが、東京・お台場エリアに誘致する計画を発表しました。実現するかは分かりません。ただ、もし本当に完成したら、新たな観光名所となることは間違いないでしょう。
以下のリンクは、グランドキャニオンなどを巡る日帰りツアーの詳細記録です。


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